※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.
また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.
2018年6月10-11日
第10回命名規約輪読会
岡西政典
前提知識
条67. 一般条項
67.9. 誤同定されたタイプ種.
有効に固定されたタイプ種が誤同定されていたことが後になって判明した場合,条70.3を適用する(本条には存在価値がないらしい).
→条70.3. タイプ種が誤同定されていたことを発見した著者は,その著者の判断で名義種を選び,タイプ種として固定してよい.例えば,Aus busをタイプ種としたが,その実体がAus cusであった場合,Aus busをタイプ種として選ぶ(条70.3.1)か;Aus cusとAus busの両方を引用した上でAus cusを選ぶことができる(条70.3.2).
※大久保(2006)を見る限り,もう少し考えられる例は複雑である.
故意であることが明確な誤同定が引用されて固定されたタイプ種については条67.13.で解説.
67.10. 名義属階級群タクソンの統合.
複数の名義属階級群タクソンが属階級群レベルの一つの分類群に統合されたとしても,それぞれのもつタイプ種は変わらない.
例えば,Aus ausをタイプ種に持つAusとBus busをタイプ種に持つBusが統合されてAusになった場合,Aus ausがBusのタイプ種になるわけではない.
67.11. 既にタイプ種になっている名義種.
ある一つの名義種が,二つの属,二つの亜属,または属と亜属の二つのタイプ種になる事は差支えない.しかし勿論,前二者の場合は,どちらかの客観シノニムとなる.しかしこれが「故意に」行われた場合は,条11.6に抵触し,その行為によって設立された属階級群名は不適格となる可能性がある
67.12. 最初に異名で示された名義属および名義亜属のタイプ種.
最初に異名として公表されたが,1961年よりも前に適格とされた属階級群名は,異名として最初に公表された日付を持って適格である.そして,これらのタイプ種は,後に異名とされた属階級群のタイプ種ではなく,最初に公表された名義(亜)属を結合し,適格な学名で引用された名義種である.この時複数の名義種がある場合は,条68, 69に従ってタイプ種固定されることになる.
本文の例がわかりやすい.
67.13. 既に設立されている学名の故意の誤適用もしくは誤同定として引用されたタイプ種.
67.13.1.ある名義(亜)属の設立時に以前の著者が誤同定もしくは誤適用した学名をタイプ種として固定した場合,その行為によって固定されたタイプ種は新しい名義種となる(条11.10.,条50.1.2.,条70.4.4.2).
67.14. 寄集群では無視されるタイプ種.
ある名義属階級群タクソンの学名が後に奇集群に適用され,それが続けられる場合,そのタクソンのタイプ種は無視する.また,その学名は,他の学名と先取権を競わない(条23.7).
引用文献