※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

2011年6月5-6日

第3回命名規約輪読会

照屋清之介

 

条51. 著者名の引用.

  • 本条における“著者名の引用”とは、Ausidae AuthorX や Aus bus AuthorY のように、学名に続けて著者名を書くことを言う。

51.1. 著者名の使用は任意.

  • 著者名は学名の一部ではない。それゆえに著者名の引用は任意である。
  • ただし、(見落としや階級移動、種小名と属名の結合の変化等により)ホモニムが存在してしまったときのために、どの時点で、誰が命名した学名を用いたのか明白にするためにも、引用を行った方が望ましい。

勧告51A. 著者と日付の引用.

  • 著作物中に学名が使われる場合は、少なくとも一度は著者と日付を引用するべきである(Aus xusBus xus が別種なのか、属が移動しただけなのかわからなくなることがあるため)。
  • ある著者の姓と名が混同されるおそれがあるときは、学術文献中と同様の方法でそれらを区別すべき。

勧告51B. 著者名の換字.

  • ラテンアルファベットを使わない言語で書かれる著者名を学名で引用する時には、区別的発音符があってもよいからラテン文字で綴るべき(新属 Aus が田中によって日本語の論文で記載された場合、のちに引用するときは「Aus 田中」ではなく「Aus Tanaka」にすべき)。

51.2. 著者権引用の形式.

  • 学名の著者は、タクソン名の直後に続けられる。ただし、例外(条51.3. 属の移動により丸括弧“(”を使用する場合)がある。

勧告51C. 多数の著者の引用.

  • 学名の著者が3 人以上の場合、第一著者の後に et al. (この用語は2 人では使えない)を書いて著者の引用としてもよい。ただし、その著者物中のどこかで一度は著者全員の名前を提示していることを条件とする。

51.2.1. 学名の著者ではなく、学名の使用者を表示したい場合は、丸括弧以外の明白な別のやり方で、そのタクソンの学名から区別する。

Cancer pagurus Linnaeus について,Latreille 氏の用法として引用したい場合は

Cancer pagurus Linnaeus sensu Latreille

Cancer pagurus Linnaeus (as interpreted by Latreille)

などとして書く.決して“Cancer pagurus Latreille”あるいは“Cancer pagurus(Latreille)”と書いてはいけない。

 

勧告51D. 著者不明の場合・著者不明扱いであるが著者が判明している場合

  • あるタクソンの学名が匿名で設立された場合、“Anon.”をあたかも著者名であるかのように使うことができる。(例 Aus bus Anon., 1800)
  • しかし、その著者権がわかっているか、外的証拠から推定される場合は、角括弧に入れて引用すべきである。匿名で提唱された学名の適格性は条14(匿名による学名提唱:1951 年になる前は適格性に影響しない。1951 年からは適格性が剥奪される)。

勧告51E. 貢献者の引用

  • 要は、情報検索を用意にするような表記を行うこと
  • たとえば、その学名の著者がB である状況である場合
    • “B in A” … 著者物の著者がA で、B が学名の適格性の責任を持っているが、出版要件に対する責任は持っていない。
    • “B in A & B” … A & B による共著の著者物で、A が学名に対する責任を持っていない。

勧告51F. 不適格名や除外された学名の著者の引用

  • 引用が必要な場合は、その学名の命名法的地位を明らかにするべき(例の説明は、仕組み162 ページ)。

51.3. 変更された結合における著者名(や日付)をくるむ丸括弧の使用

  • 属が移ったときは、著者名や日付を丸括弧でくるむ。

51.3.1. 設立時に属名が不正な綴り(誤った原綴り、誤った後綴り)修正名に結合していたときや、不当な修正名が有効名であったとしても、丸括弧は用いない。

(例;1839 年 Fenestella Lonsdale, 1839

1850年 Fenestrella subantiqua d’Orbigny, 1850

この種は Fenestella subantiqua d’Orbigny, 1850 と引用し、

Fenestella subantiqua (d’Orbigny, 1850) とは引用しない。

 

51.3.2. 丸括弧の使用は、①亜属名の有無、②同属内での別亜属への移動、③種階級群内での階級の変更、④亜種の同属他種への移動によっても影響しない。

(例;オリジナルが Aus ( Bus ) xus AuthorX のとき

Aus xus AuthorX 、 ②Aus ( Cus ) xus AuthorX、③Aus bus xus AuthorX 

 

しかし、Bus xus ( AuthorX ) 、 Bus ( Aus ) xus (AuthorX)

また、オリジナルがAus bus xus AuthorX のとき

Aus xus AuthorX

 

51.3.3.

(例;Lowe ( 1843 ) の魚

彼は、まず論文中でSeriola gracilis を記載した。Seriola は既知の属。

記載中で「将来Seriola 属から分離すると今は考えにくいが、分けるならCubiceps 属と呼ぼう」と記述。

・・・

現在ではCubiceps は有効名として使用されており、Seriola grasilis Lowe がタイプ種であり、有効名として Cubiceps gracilis (Lowe)と表記されている。

 

勧告51G. 新結合を作成した人物の引用

  • 属を移した人の名前も引用したいときは、種階級郡名の著者を丸括弧でくるみ、その後に続ける。

(例; Aus bus ( AuthorX ) AuthorY

Aus bus ( AuthorX, 1905 ) AuthorY, 1910

動物での引用例は珍しいですが、国際植物命名規約では必ずこのように引用しなければならないとしている。