※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

2011年6月5-6日

第1回命名規約輪読会

平良渉

 

章10 名義種階級群タクソンとその学名

条45 種階級群

45.1 定義

種階級群:規約で規定された名前をもつタクソンの最も低い階級にある集合体.

「種小名と亜種小名を使って学名表記できるタクソンのうち,亜属より下でかつ亜種にならない階級より上に位置する階級のタクソンすべて」

 

45.2 あらゆる名義種階級群タクソンとその学名に適用する条項.

  • 種階級群の名義タクソンを対象にした規定は,種と亜種に対して等しく適用される.
  • 種階級群名を対象とした規定は,種と亜種に対して等しく適用される.

45.3 種階級群名の適用.

  • 同定対象の種または亜種に対して,既定の種小名が適用できるかどうかは,担名タイプ標本を基準として決定する.記載文の内容よりも標本を優先させる.

45.4 種階級群名の形成と運用.

  • 種階級群名に関する適格性の既定は条11, 19, 23 – 34 の部分

45.5 亜種よりも低位の学名(亜種にならない名前)

  • 4番目の名前は亜種にならない実体(規約の範囲外)
  • 亜種よりも低位の実体:
  1. 亜種の下の階級にあるタクソン
  2. 種を集団内の差異によって区別した標本

例:性差,カースト,年齢差,季節型,奇形,多型,世代差

→亜種になるかならないかは条 45.6 で規定されている.

 

45.5.1

亜種よりも低位の実体であったタクソンが亜種や種のタクソンに格上げされた場合,その適格名は成立した著作物の著者・日付を取る.

 

45.6 二語名の後に続く学名が亜種の階級か亜種よりも低い階級かの決定.

亜種にならない例 → 条 45.6.1~.3,45.6.4.1(45.6.4 の例外)

亜種になる例 → 条 45.6.4(45.6.3 の例外)

 

条45(名義種階級群タクソンとその学名)

 

45.6.1

第3名に対して,著者自身が亜種にないないとはっきりと言葉で書いている場合や,それがあいまいさがなくわかる場合は亜種にはならない.

 

45.6.2

第3 名に対して,aberration(変性種), ab., morph(モルフ,生活型)のいずれかの用語を使っている場合は亜種にならない.※変性種とは種内における一種の群れを示す用語で,「奇形標本」や「普通でない標本」ではない.

 

45.6.3

1961年に以降にvariety かform を示す用語(var, v., forma, f.など)を伴った第3名は,亜種にはならない.

 

45.6.4

1961 年に以前にvariety かform を示す用語(var, v., forma, f.など)を伴った第3 名は,亜種にはなりうる.ただし,45.6.1 に抵触しない限り.

 

45.6.4.1

1985 年(命名規約第3 版 出版)以前に名前が種や亜種として適格名として採用されたことがあるか,古参ホモニムとして扱われたことがあれば,45.6.1 に抵触していても45.6.4 が適応され,亜種となる.