※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

 2014年6月15-16日

第6回命名規約輪読会

小林元樹

 

23.9. 優先権の逆転

先取権の目的[条23.2](学名の安定化)にそぐうように適用が緩和される。

 

23.9.1.

次の条件がどちらも当てはまる場合、慣用法を維持する。

23.9.1.1. 古参異名または古参同名が1899 年より後に有効名として使われていない。

23.9.1.2. 新参異名または新参同名が特定タクソンの推定有効名として、直近50年で下図の条件で使用されている。

・「10 人の著者」には共著者を含めるかなどが疑問点としてあがった。

 

23.9.2.

条23.9.1 が当てはまる場合、古参・新参の学名を引用し、後者の方が有効であることおよびそれがこの条に従ったものであることを述べるべき。また、条23.9.1.2. に当てはまる根拠を挙げ、知る限り23.9.1.1. の条件が当てはまることも述べなければならない

引用の際、以下のように学名の地位を示さなければならない。

  • 新参であるが有効な学名→擁護名
  • 古参であるが無効な学名→遺失名

例↓

勧告23A. 抑制が望ましい場合

古参異名を無効にするには遺失名とする以外に、古参名を抑制する手段がある。ただし、抑制すると後世でその種名を再び使用することはできない。

 

23.9.3.

条23.9.1 に当てはまらないが、新参名を使った方が良い

→強権[条81]の下、案件を審議会に付託。審議中は新参名を維持する。

 

23.9.4.

案件が科レベルの同名関係であり、タイプ属の学名が類似しているためである→条55.3

 

23.9.5.

 

23.9.6.

条23.9.1 に違反する学名の故意の使用、異名リストにある学名、要旨集・学名リスト・検索にある学名は、条23.9.1.1 と 23.9.1.2 の条件としてカウントしてはいけない

・違反する学名の故意の使用について、条23.9.1.1 と 23.9.1.2 の両方を満たした後で故意に23.9.1.1 の古参異名、古参同名を使ってはいけないという意味と解釈した。

 

23.10 優先権の間違った逆転

23.11. 先取権の厳格な適用が望まれる場合

条 23.9.1 に当てはまるときに、古い異名で置き換えたいと望むとき→強権の下、審議会に提訴

・提訴をせずに著者の判断で変更を行っては行けないという意味であるか。

 

23.12. 規約旧版の条23b の下で拒否された学名

23.12.1. “拒否された”は厳密に解釈する

  • 無視したことは拒否にならない
  • 拒否名は引用されており、その学名の新参異名が有効名として使用されなければならない

・規約旧版の条23b が規約に載っておらず、具体的に確認できず。

 

23.1.2. 条23b で拒否された学名が以下を満たすとき、有効であるとできる

  • もはや別の学名の異名でない
  • 異名自体が本規約の条項の下で無効
  • 拒否された学名がほかに無効である理由が無い

 

和訳第二版の条23b

b)制限—ある名称が、シノニムとして古参であっても、主要な動物学文献に、50 年以上にわたって使用されずにあった場合は忘れられた名称とみなされる(遺失名nomen oblitum).

(i) 1960 年より後で、このような名称を発見した動物学者は審議会に付託して、適宜な公認廃棄名索引に登記させるか、またあるいは、もしこれが命名の安定性と普及性に、より良い効果がある措置であるのならば、適宜な公認名表に登記するものとする。

 

(ii)審議会の指導が無ければ遺失名は用いられないものとする。

 

(iii)この規定は一般使用期限が50年未満であったものでも、応用動物学に置いて重要なる名称の保存を、審議会へ申請することを妨げるものではない。