※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.
また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.
2012年6月10-11日
第4回命名規約輪読会
橋詰 和慶
本規約は自分の頭ではわかりにくい文なので、多少、不正確でも砕けた文章にして解説する。
一般に記載される種が増加するほど、従来のタクソンは細分されることが多い。その際、元々あったタクソンと新しいタクソン、それぞれの設定に基準となる下位の名義タクソンの決定の方法を、原出版の意図(命名者による指定)を尊重しつつ、それが不明確な場合も考慮して、条68 において成文化している。
条68 原出版中で決定された基準種
68.1 基準種を決定するにあたり、条68.2~68.5 で規定するうち、複数の方法が適用可能な場合、以下のような優先順位に従いさえすれば有効な決定と扱われる。
①68.2 原指定 → ②68.3 単型 → ③68.4 完全同語反復 → ④68.5 リンネ式同語反復
勧告68A 基準の決定にあたっての引用
基準種を決定するにあたっては、有効な方法で決定した場合のみ採用すべきである。
条68.2 原指定による基準種
ある属の分類群を設立したときに、ある名義種1 種を明確に指定したとすればそれが基準種となる。しかし誤同定された基準種の場合はそうならないことがある。
68.2.1 新しい属や亜属に属する種が仮に複数あって、どれが基準種であるか明記されていない場合で、過去に仮に単一種による新属新種の設定があった場合には、その時に記載された種が基準種の原指定とみなされる。
68.2.2 ある属の設立時に基準種の明確な指定がないものの、ある名義種1 種にtypicus,-a,-um もしくtypus という種小名が与えられていれば、その種が基準種の原指定とみなされる。
条68.3 単型(単一標本)による基準種
単一標本からなる適格な分類学的種をもとに名義属が設立された場合、そのときの名義種が基準種に決定されたとみなされる。仮にこれにどのような異名などが引用されてようが、別の名義種がその名義属に含まれる可能性があると著者が意図していたとしても、疑問符付きでその名義属に含まれる可能性が示唆された場合でも、それは成り立つ。
68.3.1 複数の亜属からなる新属が設立されたとき、仮に1 種のみからなる名義亜属があれば、そこでの名義種が、新しい属においても単型(単一標本)による基準種として扱われる。
条68.4 完全同語反復による基準種
ある名義属が設立したときに含まれる有効種の種小名や引用されているその異名が属名の綴りと同じ場合があれば、その種が基準種になる。
条68.5 リンネ式同語反復による基準種
1931 年より前に設立された属で設立時に既にあった名義種において、異名リスト中に1758 年より前の一語からなる学名が引用されていた場合は、その名義種を基準種と扱う。
条68.6 過去の著者が誤って運用及び同定した名前を意図的に引用して基準種決定に使った場合その基準種は無効になり、別の名義種が基準種の決定に用いられることがありうる。