※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

2014年6月15-16日

第6回命名規約輪読会

田中颯

 

条22.日付の引用

学名の後にくっつくこれ↓について

Fibulariella acuta (Yoshiwara, 1898)

 

ある学名の公表の日付を引用する場合は,著者名に続ける(条51 を見よ).

 

勧告22A.引用.

22A.1.日付の引用.

あるタクソンを扱う著作物中で少なくとも一度,学名の公表の日付(およびその著者権.条50 を見よ)を引用することを強く勧告する.これは,同名の場合や,原結合中でない種階級群名の場合,特に重要である.

 

Fibularia japonicaPeronella japonica では属が移動しただけなのか,それとも別種なのか区別ができない.

Fibularia japonica Shigei, 1982Peronella japonica Mortensen, 1948 のように,著者名・日付の情報を付加することで同名の種を区別しやすくなる!

この場合,著者名・日付が異なるため,別種であることが分かる.

 

22A.2.引用方法.

ある学名の公表の日付を引用するにあたり,著者は,

22A.2.1.著者名と日付の間にカンマ1個以外のものを挿入するべきではない.

 

注)第3版までは,命名者名と日付の間にカンマ1個を置くように勧告されていたが,第4版では,勧告22A.2.1 によりスペースで区切るだけの表記法も勧告違反ではなくなった

F. japonica Shigei,1982F. japonica Shigei 1982 のどちらでも良い!

 

疑問1)PDF版では著者名と日付の間に「カンマと半角スペース」が挿入されているが, カンマとスペースは併用しても良いのか?

F. japonica Shigei,1982 と

F. japonica Shigei, 1982 の違い.気にしなくて良い?

⇒カンマの後には普通スペースを挿入するので,後者の方が良いのか.

 

日本語版の脚注に誤解あり?元の英文では「コンマ以外のものは入れてはいけない」.つまり,コンマは必要であると解釈できる.大久保(2006)でもそのように解釈.

Zoological Record,Official Listではカンマがないらしい.これは編集の効率の観点かららしい.

データベース構築を考えてもカンマがあると不便だろうから,カンマ無しにも合理性がある.

⇒伝統的なカンマ派と,合理的なカンマ無し派.

 

22A.2.2.もし実際の公表の日付と著作物中で特定される日付(奥付の日付)とが異なるならば,実際の公表の日付を引用するべきである.ただし,

22A.2.3.実際の日付と奥付の日付の両方を引用したい場合,はじめに実際の日付を引用し,それに情報のために奥付の日付を続け,丸括弧もしくは角括弧と引用符でくるむべきである.

条40.2.1の下で維持されている科階級群の置換名の日付に対する丸括弧の異なる用法については,勧告40A を見よ.

 

例)1970 年に公表されたにもかかわらず1969 年という奥付の日付をもった著作物中から引用.

★普通は公表日を引用するべき ⇒ Ctenotus alacer Storr, 1970

★両方の引用が必要なとき

Ctenotus alacer Storr, 1970(“1969”),Ctenotus alacer Storr, 1970[“1969”],

Ctenotus alacer Storr, 1970(imprint 1969),Ctenotus alacer Storr, 1970(not 1969)

 

22A.3.変更された結合での日付.

結合が変更された学名において種階級群名の原公表の日付を引用する場合,その日付は,原著者名をくるんでいるのと同じ丸括弧でくるむべきである[条51.3].

★条51.3 「…著者名を引用する場合は,著者名も丸括弧でくるむものとする.」

 

例.Limax ater Linnaeus, 1758 という種が,属Arionに移動する.

Arion aterLinnaeus, 1758

 

注)また第3版には,

「当該学名を含む著作物が日付を特定している場合,その日付を丸括弧や角括弧にくるむべきではない」

「日付が特定されないが当該著作物そのものに由来する証拠によって示されるならば,日付もしくはその一部分を丸括弧でくるむべきである」

「日付が外的な証拠のみによって示されるならば,日付もしくはその一部分を角括弧でくるむべきである」

という勧告があったが,第4版ではこれらは削除された.

ただし,『Official List』などでは上の表記法が用いられている