※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

2017年6月4-5日

第9回命名規約輪読会

田中 颯

67.8 新置換名で示される名義属階級群タクソンのタイプ種.

ある著者が,すでに設立されているある属階級群名に対する新置換名として新しい属階級群名を明示して公表する場合,もしくは,すでに設立されている属階級群名を不当な修正名[条33.2.4]で置き換える場合,元の名義タクソンとそれを置換したものはともに同一のタイプ種をもち,したがって,それに反するいかなる言明があったとしても,一方に対するタイプ固定は他方にも適用する(条13.3 を併せ見よ).

・条33.2.4 は条33.2.3 のミスプリ(大久保 2006).不当な修正をされた属階級群名と,それの基になった属階級群名は,同じタイプ種をもつ.

⇒33.2.3.上記以外の修正名はすべて“不当な修正名”である.不当に修正された学名は適格であり,固有の著者と日付をもち,原綴りの学名に対する新参客観異名である.それは,同名関係に入り,代用名として使用し得る.しかし,

33.2.3.1.ある不当な修正名が慣用されており,しかも原著者と日付に帰せられているならば,それを正当な修正名と見なすものとする.

 

67.8.1.

タイプ種は,元の名義属階級群タクソンのタイプ種として固定されるに適任の名義種(条67.2 を見よ)でなければならない.

⇒67.2.タイプ固定に適任な種(設立時に含められた名義種).名義種は,設立時に含められた名義種である場合に限り,名義属もしくは名義亜属のタイプ種として固定するのに適任である.

例:Aus Dupont, 1860 という古参同名が別にある状況でも,タイプ種の学名は変えず(67.1.2.) のでCus のまま.

 

~~~~~~~~ここ以降 未議論~~~~~~~~

 

67.9.誤同定されたタイプ種.

有効に固定されたタイプ種が誤同定されていたことが後になって判明した場合,条70.3の条項を適用する.

⇒70.3.誤同定されたタイプ種.タイプ種が誤同定されていたことを発見した著者は,次の各号のいずれかのうち,その著者の判断で安定と普遍性にもっともよく寄与するであろう名義種を選びタイプ種として固定することができる.

 

67.10.名義属階級群タクソンの統合.

複数の名義属階級群タクソンが属階級群レベルの単一の分類学的タクソンに含まれる場合,それぞれのタイプ種はそのまま変わらない(条23 を条件として,そのようにして形成された分類学的タクソンの有効名は,最も古い潜在的有効名をもつ名義タクソンの有効名である).

・条23 は先取権の原理.原則,あるタクソンの有効名は,そのタクソンに適用される最も古い適格名である.

 

67.11.すでにタイプ種になっている名義種.

ある名義種がある名義属もしくは名義亜属のタイプ種であるという事実は,その種が別の名義属もしくは名義亜属のタイプ種であることを妨げない.この場合,それら属階級群名は互いの客観異名である[条61.3.3].

⇒61.3.3.複数の名義属階級群タクソンが,同一のタイプ種をもつ場合,あるいは,学名は異なるものの同一の担名タイプに基づくタイプ種をもつ場合,それら名義属階級群タクソンの学名は客観異名である.

 

67.12.最初に異名で示された名義属および名義亜属のタイプ種.

ある属階級群名が,有効だとして使われている別の学名の異名として適格な著作物中で最初に公表され,後世に条11.6.1 の条項下で1961 年よりも前に適格にされた場合,最初に異名として公表されたこの名義属もしくは名義亜属のタイプ種は,最初にそれと直接結合した(適格な学名で引用された)名義種である.

⇒11.6.異名としての公表.適格な著作物中で最初に公表されたときに,当時有効名として使われていた学名の新参異名として扱われた学名は,それによって適格になることはない.11.6.1.ただし,新参異名として公表された学名が,1961 年よりも前に適格名として扱われており,しかも,あるタクソンの学名として採用されたかまたは古参同名として扱われた場合,そのような学名はこれによって適格になるが,日付は異名として最初に公表された日付をとる.

 

67.12.1.

最初に異名として公表され条11.6.1 の下で適格になったある属階級群名に,複数の名義種が最初に直接結合した場合,それら名義種は,条68 と条69 の目的における設立時に含められた名義種である.

 

67.13.すでに設立されている学名の故意の誤適用もしくは誤同定として引用されたタイプ種.

 

67.13.1.

ある新しい名義属もしくは名義亜属の設立時に,すでに設立されているある学名をそれに含め,しかし,以前の著者が誤同定もしくは誤適用した意味で故意にその学名をタイプ種として固定した場合[条67.2.1],その行為によって固定されたタイプ種は新しい名義種と見なされる[条11.10,50.1.2,70.4.その種の担名タイプについては,条72.4.2 を見よ].

・条70.4 はある名義種を誤同定の意味で故意にタイプ種を固定する場合に,条11.10 と条67.13 を参照しろと言っている.

⇒67.2.1.本規約の意味において“設立時に含められた名義種”とは,新たに設立された名義属もしくは名義亜属に含められたものであって,種もしくは亜種(条45.6,68.2 を見よ)の適格名(種や亜種の不正な綴り[条67.6]による引用を含む)で原公表中に引用されたものと,過去の誤同定を意図的に適用したもの(条11.10,67.13,69.2.4 を見よ)として原公表中に引用されたものとに限る.

 

 

⇒11.10.誤同定を故意に用いること.ある種小名もしくは亜種小名を新しい名義属階級群タクソンのタイプ種として用いるとき,それを故意に過去の誤同定の意味で使用した場合には,その著者がその学名を用いたことは,新しい名義種を示しているものと見なされる.その種小名は,その新しい属階級群名と結合して新たに提唱されたかのように見なされ,それ自体の著者と日付をとって適格である(過去の誤同定の意味であることを明言して設立時に含められた種をタイプ種として固定することについては条67.13 を見よ.設立時に含められた種をすでに設立されている名義属または名義亜属のタイプ種として後指定することについては条69.2.4 を見よ).

⇒50.1.2.過去の誤同定の意味における種階級群名を故意に採用することによるタイプ種の原指定の場合においては,誤同定を故意に使用した人物を新しい種小名の著者と見なすものとする[条11.10,67.13,70.4].

 

67.13.2.すでに設立されているある属階級群タクソンのタイプ種として,誤同定の意味でと明言して設立時に含められたある名義種を後指定することについては,条69.2.4 を見よ.

⇒69.2.4.すでに設立されている名義種の誤同定もしくは誤適用の意味でとはっきり述べて設立時に含められた[条67.2.1]ある種をタイプ種として後世に指定した場合,そのようにして指定された種は,実際に指し示された分類学的種の有効名によって示される名義種である(誤同定もしくは誤適用としてその名が引用された名義種ではない).

 

67.14.寄集群では無視されるタイプ種.

ある名義属階級群タクソンの学名が後世に寄集群に適用される場合,その学名が寄集群名として使用されている限り,そのタクソンのタイプ種を無視する(条23.7 も併せ見よ).

・該当するのは条23.7.2 です.寄集群:いくつかの種の集まり,あるいはある発生段階(たとえば,卵とか幼生)にある生物の集まりであって,確信をもってなんらかの名義属に位置づけることはできないもの.

⇒23.7.2.名義属階級群タクソンに対して設立されたが,後に寄集群に対して使用されるようになった学名は,そのように使われている限り,他の属階級群名とは先取権を競わない(条67.14 も併せ見よ).

⇒(備考)13.3.2.いつの時点で公表されたものであっても寄集群[条66]に対して公表された学名は,タイプ種の固定を伴う必要がない.なぜなら,寄集群というものは,タイプ種をもたないものだからである[条42.3.1].