※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

2011年6月5日

第3回命名規約輪読会

石森博雄

 

章12. 同名関係

条52.同名関係の原理.

 

52.1. 同玄関系の原理の声明.複数のタクソンが互いに識別されるとき,それらを同一の学名で示してはならない.

52.2. 同盟関係の原理の運用.複数の学名が同名であるときは,先取権の原理[条52.3]を適用して決定される古参名のみを有効名として使用することができる.除外されるものについては,[条23.2,23.9](使用されていない古参同名)および[条59](種階級群における二次同名)を見よ.

52.3. 先取権の原理の適用.(種階級群の場合の一次同名と二次同名を含め)同名の相対的優先権は先取権の原理と第一校訂者の原理[条23, 24]の該当する条項を適用して決定する.

52.4. 新参同名の置換.[条23.3.5, 23.9.5, 39, 55, 60]を見よ.

52.5. 古参同名の抑制.[条54.4, 81.2.1]を見よ.

52.6. 不正であって訂正された原綴り.不正な原綴りを訂正した綴りは同盟関係に入り得るが,不正な原綴りが入ることはない[条32.4].

52.7. 動物でないタクソンの学名との同名関係.動物タクソンの学名であって,動物として扱われたことが一度もないタクソンの学名と綴りが同じものは,動物命名法の目的[条1.4, 2.2]のためには同名ではない.

例:Erica 蜘蛛とツツジ, Variola バラハタと天然痘

 

条53. 科階級群,属階級群,および種階級群における同名関係の定義.

 

53.1. 科階級群における同名.科階級群においては,複数の適格名であって,同一の綴りをもつかまたは接尾語[条29.2]にしか違いがなく,しかも,別々の名義タクソンを示すものは同名である.

53.2. 属階級群における同名.属階級群においては,複数の適格名であって同一の綴りで設立されたものは,同名である.

53.3. 種階級群における同名.複数の適格な種階級群名であって同一の綴りをもつものは,設立時に同一の属名に結合して設立された場合も(一次同名),後世に同一の属名に結合して公表された場合も(二次同名),いずれも同名である(同名である属名に結合した種階級群名については,[条57.8.1]を見よ.

53.3.1 [条58]に列挙された種階級群名の変体綴りは,同名関係の原理の目的では,同じ綴りであるとみなす.

 

条54. 同名関係に入らない学名.次の各号は同名関係に入らない.

 

54.1. 本気役の条項[条1.3, 8.3]から除外される学名([条1.4, 52.7]も併せ見よ).

54.2. 不適格である学名[条10.1]であって,[条20]に規定する場合以外のもの.

54.3. 原綴り[条32.4, 32.5]か後綴りかを問わず,不正な綴り,訂正していない形[条32.4, 33.3]では適格でないからである.

54.4. 審議会の裁定によって,同名関係の原理の目的のために抑制された学名[条81.2.1]

 

条52-54で引用されている部分

 

1.3 除外 仮説的概念,奇形標本,雑種標本などは本規約の条項から除外する.

1.4 独立性 動物命名規約は他の命名規約から独立している.勧告 1A 属名重複は避けるべき.

2.2 一度でも動物に分類されたことがあるタクソンの適格名は,そのタクソンが動物以外に分類されても,動物命名法のなかでの同名関係において優先性を競い続ける.

8.3 学名と行為は棄権し得る.学会要旨集などで明記してあれば適格性を失う.

10.1 適格性の要件 [条10]から[条20]までを満足する場合に限り適格であり,かつ著作権と日付をとる.審議会の裁定が入ることがある.

20 これは現生の~の化石だとという意味で化石に与えられた-ites, -ytes, -ithes で終わる属名は同名関係の原理の目的のために限り適格である.そのような学名は有効名[条23.1]としても科階級群の基礎[条11.7.1.4]としても使うことはできない(例を参照).

例 Pectinites Tellinites for 現生のPecten Tellina に対して

23 先取権の原理 あるタクソンの有効名はそのタクソンに適用される最も古い適格名である.

23.2 先取権の原理は,本規約の目的にしたがい学名の安定を促進するために使用するものとする.混乱を生じる場合は[条23.9]に従うべき.

23.3.5 あるタクソンに対して使用されている学名が不適格であるか無効であることがわかったなら,その異名の中で次に古い適格名に置換しなければならない.有効な異名がなければ代用名[条60.3]を設立しなければならない.

23.9 慣用法 先取権の原理の目的[条 23.2]に従って,その適用を緩和する.古参異名・古参同名が1899 年よりも後に有効名として使用されてないかつ,新参異名・新参同名が推定有効名として直近50 年の間で10 年間を下回らない期間中に少なくとも10 人の著者25 編の著作物で使用されている場合.

23.9.5 ある使用中の種階級群名が同じく使用中の種階級群の新参一次同名[条53.3]であることが1899 年以降に見つかった場合は,審議会の裁定を求めて,その間は慣用法を 維持する[条82].

24 同時に公表された学名,綴り,もしくは行為間の優先権.

24.1 学名の優先権の自動決定.同名・異名が同時に,しかし科階級群,属階級群,種階級群のどれかひとつのなかで別々の階級で公表された場合,より高い階級で公表された学名が優先権をとる[条55.5, 56.3, 57.7].

24.2 第一校訂者による決定

29.2 科階級群の接尾辞.接尾辞-OIDEA は上科,-IDEA は科,-INAE は亜科,-INI は族,-INA は亜族名に用いる.

32.4 不正な原綴りの地位.ある原綴りは,[条32.5]が要求するように訂正しなければならないのならば,不正な現綴りである.不正な原綴りは独立した適格性を持たず,同名関係に入れることも出来ないし,代用名として使用することもできない.(適格じゃないから)

32.5 訂正しなければならない綴り(不正な原綴り).書き間違い,誤植は不慮の過誤という証拠があればそれを訂正しなければならない.発音符などの記号は訂正しなければならない.

33.3 不正な後綴り.ある学名の後綴りのうち正しい原綴りと異なるものは,強制変更でも修正名でもなければ,すべて不正な後綴りである.それは適格名ではなく,不正な原綴りと同様に同名関係には入らず,代用名として使用し得ない.しかし,[条33.3.1]:ある不正な後綴りが慣用されており,しかも原つづりの公表に帰せられているとき,その後綴りと帰属を保存するものとし,その綴りを正しい原綴りとみなすものとする.

39 タイプ属の学名の同名関係もしくは抑制に基づいた無効性.ある科階級群タクソンのタイプ属の学名が新参同名であるかまたは審議会によって抑制されているなら,その科階級群タクソンの学名は無効である.その科階級群名が使用中であるときは置換しなければならない.

52.3

54.4

55 科階級群名.同名関係の原理は,科階級群レベルの生痕化石タクソンの学名を含め,すべての科階級群名に適用する.

57.8.1 例外.同一の綴りだが別々の名義属に対して設立された同名の属名[条53.2]と結合している,同じ綴りの種階級群名の間の同名関係は無視するものとする.

例 昆虫のNoctua variegata と鳥類のNoctua variegata 種小名は有効.

58 同じ綴りだとみなす種階級群名の変体綴り.次の点でしか綴りが違っておらず,しかも同一の由来と意味であるものは,同属,もしくは同一の奇集群に含められたときは同名だとみなす.

59 二次同名の有効性60 新参同名の置換.

81.2.1 強権発動.指針と原則.2 つの学名が同名である場合,古い方の同名を“全面抑制”することができる.すなわち,先取権の原理と同名関係の原理の両方の目的について抑制して,若い方の学名を有効名として使用し続けることができるようにすることができる.“全面抑制”された種階級群命は適格名[条10.6]であり続け,ある属もしくは亜属のタイプ種を示し続けることができる[条67.1.2].

注:2006~はネットで見られる.

例:Manospondylus gigas Cope, 1892 Tyrannosaurus rex Osborn, 1905

2000年に前者を遺失名に後者を援護名に強権で決定した.