※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.
また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.
2013年6月9-10日
第5回命名規約輪読会
照屋清之介
「第一回の報告書」では、『前提として「適格」であることと「有効」であることの違いに理解が必要』と書かれていたため、以下に関係性のまとめと用語集の説明を抜き出した。
条10. 適格性を授ける条項.
10.1. 満たすべき一般条件:条10 と条11~20 を満たせば適格。例外的に審議会の強権等(条78~81)で条件を満たしていなくても適格になることがある。
10.1.1. 時をおいて2 つ以上の出版物に分割されて発表された場合は、要件がみたされた時点で適格になる。
勧告10A. 編集者と出版社の責務.
出来るだけ同一著作物で同一日に公表して。
10.2. 亜種よりも低い階級の学名の適格性
10.3. 寄集群や生痕化石タクソンに対して提唱された学名の適格性
寄集群:属階級群名。 生痕化石タクソン:科、属、種階級群名のいずれか。
属階級群においてのみ例外的な取扱を受けて、適格性のいくつかの要件が緩和。
10.4. 属の区分のための学名の適格性
問題としているのは、属と種の間の存在。例えば亜属や上種など。
属階級群では属と亜属、種階級群では種と亜種がある。
“節”や”区”という単語で示されていても亜属として扱う。
“上種”のような用語で種の集群に用いられる学名は、属階級群とは見なさない。
10.5. 最初は動物にではなく後に動物に分類されたタクソンの学名の適格性
最初、動物ではないと考えられて命名されたが、その後、動物とされるようになった場合に、既存の名前をどう扱うかの規定。
国際植物命名規約か国際細菌命名規約の規定を満たして出された名前は、動物命名法の規定においても適格性の要件を満たすならば、そのままの名前で適格名として引き継ぎ、最初に出版されたときの著者・年号をとる。
元の名前がそれらの規定を満たしていなかったか、動物に移行したときに適格名として認められなかった場合は、動物命名法の適格性の要件を満たすようになった時点から、適格性を満たした著者・年号による適格名となる。
10.6. 適格性に及ぼす無効性の影響
一時適格だった学名は、抑制名として無効であったとしても適格であり続ける。
ただし、審議会がそれ以外の裁定を下した場合は、無効になることもある。
10.7. 『List of Available Names in Zoology』の関連する採用分冊に掲載されなかった種の適格性
掲載されなかった学名は、適格ではない。
条11. 要求.
名前が適格になるためには、条11.1~11.10 の規定を満たさなければならない。命名法的行為が適格になるためには、条11.1 の規定を満たさなければならない。
11.1. 公表
1758 年からで、条8 を満たす出版物の中に掲載されていなければならない。
1758 年になる前の出版されているものは適格ではない。
11.2. ラテン語アルファベットの強制使用.
ラテン語アルファベット26 文字(文字j, k, w, y を含む)=英語のアルファベット26 文字のこと。ひらがなとか漢字はダメ。区別的発音符(ā, ă, ä, â など)やアポストロフィ、抱き字(æ など)、ハイフンなどがあるからといって、その学名を不適格にはしない(訂正については、条27、32.5.2)
11.3. 由来
あらゆる言語の単語とそれから派生した単語、それらの単語から形成された単語、任意の文字の組み合わせによる単語が、本章の規定を満たす限りは名前になりうる。例の「文字の任意組合せcdafdg は単語として使用できず、したがって学名にならない」は、なぜ学名として使えないのか説明されていないのは規約の欠陥(大久保)。
「子音が3 つ以上続く単語は言語学的に発音できず、単語として使用できないため、学名にならない(勉強会の際にご教示頂きました)」
勧告11A. 通俗名の使用.
通俗名はそのままの形で学名として使うべきではない。適切なラテン語化により通俗名から学名を形成する方が好ましい。