※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 2014年6月15-16日

第6回命名規約輪読会

菊池波輝

条21 日付の決定.

21.1.採用するべき日付

条21では、条3に定める基準年の1758年より後のものについて、公表された日付をどのように採用するべきかを規定している。

 

21.2.特定される日付

 

21.3.不完全に特定される日付

基本的には、著作物の中で特定されている日付を採用する。この特定が不完全な場合、例えば月までであればその月の末日、年までであればその年の末日を公表された日付として扱う。

 

21.4.不正な日付

何らかの理由で、著作物に示されている公表の日付が正しくないことが判明した場合は、その日付ではなくその著作物が公表された著作物として存在しているこ とを示すもっとも早い日を採用する。

→著作物の存在(公表)の証拠:図書館の受領印など。不正な日付は、例えば著作物に印字された発行日付が誤植であった場合なども含まれる。

 

21.5.分割発行された著作物の日付

分割発表された著作物の分冊は、それぞれの発表日を採用する。1巻1号、1巻2号など。

 

21.6.幅をもった日付

著作物で特定されている公表の日付が1日に特定されるものでなく、幅をもって設定されていた場合は、その期間の最終日が公表の日付として扱われる。この著作物が分割発表されたものであれば21.5を、また不完全な特定であれば21.3を、この日付が正しくないことが判明すれば21.4をそれぞれ準用する。

→幅を持った日付、例えば発行年を1858/57と示している著作物の場合は、1858年12月31日を公表の日付として扱う(上述のように、それ以前に発行された証拠が存在するならばそれに従う)。

 

21.7.特定されない日付

著作物の中に公表の日付が示されていない場合は、不正な日付と同様に、その著作物が公表された著作物として存在しているこ とを示すもっとも早い日を採用する。

 

21.8.別刷りと前刷りの先行配布

1999年より後か2000年より前かで扱いが異なる。2000年より前に発表されたもので、著者が別刷りを著作物そのものの公表日付よりも前に配布した場合は、公表を早めたものとして扱われるが、1999年よりも後の場合はそのとおりでない。また、前刷りとは、著作物の発表よりも前に、個別の発表日付を付けて配布されたものであるため、その内容は前刷りの発表日付に公表されたものとみなしうる。

→別刷り・前刷り:用語集参照。前刷りと別刷りは基本的に異なるもの。200年より前に、著者が公表の用件(条8)を満たすようにして別刷りを先行配布した場合、公表を早めたと見なされる。

 

勧告 21A.特定された日付ではない日付での公表

著作物に特定される発表の日付以外に初めて著作物を発表するべきではない。また、別刷りも実際に発行されたのが確認されるまでは配布すべきではない。

 

勧告 21B.関連データの同時公表

記載、命名、タイプ固定などの新学名の適格性に関わる全ては、同一の著作物中で同時に発表されるべきであり、編集者や出版者は著者にそれを要求するべきである。

 

勧告 21C.日付の特定

編集者や出版者は、著作物中に著作物の公表日を明示して特定するべきである。分割で発行される著作物については、それぞれの分冊ごとに公表日を明示して特定するべきである。

 

勧告21D.日付情報の保存

司書は、著作物の公表の日付に関する情報、目次や図書館の受領日、受領印などを、著作物から取り払うべきではなく、また製本者にそれを許可するべきでない。

→不正な日付や特定されない日付の著作物の発表日付を特定するのに重要?

 

勧告 21E.別刷りと前刷り上の文献情報

別刷りは、原著作物の完全な書誌事項(公表日付も含む)の引用を含み、さらに原著作物と同一のページ付を持つことが求められる。前刷りの場合は、それぞれに固有の日付を持たせて、前刷りであることを明示するべきである。

 

勧告 21F.日付の訂正

命名規約上の行為を含む著作物の公表日付が正しくない、または不完全であることに気づいた著者は、その日付の訂正を適切に公表するべきである。