※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

2012年6月10-11日

第4回命名規約輪読会

瀬尾 絵理子

条62. 適用範囲.

本章の条項は,どの階級の名義科階級群タクソン(上科,科,亜科,族,亜族,および上科よりも低く属よりも高いあらゆる階級にあるもの)にも等しく適用する[条35.1].

 

界>⾨>綱>⽬> 上科>科>亜科>族(植物では「連」)>亜族>属>種という階級順.

命名規約では基本的には科階級群以下を規定している(条1.2.2.参照)

 

---------------以下、参照すべき条項----------------

35.1. 科階級群の定義.科階級群とは,上科,科,亜科,族,亜族の階級,および上科よりも低く属よりも高い随意の階級における,あらゆる名義タクソンを包含するものである(寄集群と生痕化石タクソンについては,条10.3.を併せ見よ).…P39

 

10.3. 寄集群や生痕化石タクソンに対して提唱された学名の適格性.寄集群に対して提唱された学名は,属階級群名として扱う[条42.2.1].生痕化石タクソンに対して提唱された学名は,それが最初に設立された方法にしたがい,科階級群名,属階級群名,種階級群名のいずれかとして扱う(属階級群レベルで使用するために生痕化石タクソンに対して設立された学名については,条42.2.1を見よ).…P8

 

42.2.1. 寄集群として知られる分類学上の利便のための特定の集合体に対して名言して設立された学名,および属階級群レベルにおいて設立された生痕化石タクソンに対する学名は,本規約の意味における属階級群名として運用するものとする[条10.3].

ただし,本規約の特定の条のなかに(条13.3.2,13.3.3,23.7,42.3.1,66,67.14の如く)それに反する言明がある場合はこの限りではない.これら学名は,それの設立時の著者と日付をとる.…P42

---------------以上---------------- 

 

条63. 担名タイプ.

名義科階級群タクソンの担名タイプは,タイプ属とよばれる名義属である.

その科階級群名は,タイプ属の学名に基づく[条29](条11.7,35,39,40も併せ見よ).

 

例)オトヒメハマグリ科VesicomyidaeDall & Simpson, 1901 ーVesicomya属Vesicomya Dall, 1886

 

条29より,タイプ属の学名の語幹に,科名の接尾辞-IDEAを付加したものと思われる.

 

---------------以下、参照すべき条項----------------

29. 科階級群名(章7. 学名の形成と扱い)…P28 - 30

 

11.7. 科階級群名(章4. 適格性の要件)…P10 - 12

 

35. 科階級群名(章8. 名義科階級群タクソンとその学名)…P39 - 40

 

39. タイプ属の学名の同名関係もしくは抑制に基づいた無効性.

ある科階級群タクソンのタイプ属の学名が新参同名であるかまたは審議会によって全面的もしくは部分的に抑制されているなら(条81.2.1と81.2.2を見よ),その科階級群タクソンの学名は無効である.その科階級群名が使用中であるときは,それを次のいずれかによって置換しなければならない:すなわち,それの同位科階級群タクソンの学名を含めた異名[条23.3.5]のなかの次に古い適格名によって,あるいは,もしそういう異名がないときは,(異名であっても新置換名であっても)もとのタイプ属に新たに与えられた有効名に基づいた新学名によって.…P41

 

40. タイプ属の異名関係.

40.1. 科階級群名の有効性は影響を受けない.ある名義科階級群タクソンのタイプ属の学名が別の名義属の学名の異名であると考えられる場合,その科,階級群名は,その理由のみによっては置換されないものとする.

40.2. 1961年よりも前に置換された学名.しかしながら,ある科階級群名が,そのタイプ属が異名状態であることを理由に1961年よりも前に置換された場合,その代用名は,それが慣用されているならば維持するものとする.

40.2.1. 本条の効力によって維持されている学名は,その学名の本来の著者権を保持するが,置換された学名から先取権を奪う.当該額名は置換された学名の古参異名と見なされる.…P41

 ---------------以上---------------- 

 

条63.1. 同位の名義タクソン.

科階級群の同位の名義タクソンは,同一のタイプ属をもつ[条36,37,61.2].

 

---------------以下、参照すべき条項----------------

36. 同位の原理

36.1. 科階級群名に適用する同位の原理の声明.科階級群内のいずれかの階級におけるタクソンに対して設立された学名は,科階級群内の他のあらゆる階級における名義タクソンに対しても同時に設立されたものと見なす.それらタクソンはすべて,同一のタイプ属をもち,さらにそれらの学名は,そのタイプ属の学名の語幹から形成し[条29.3],適切な接尾辞の変更を施す[条34.1].その学名は,どの階級においても同一の著者と日付をもつ.

 

36.2. タイプ属.ある名義タクソンの階級が科階級群のなかで上昇したり下降したりしても,そのタクソンのタイプ属は変わらない[条61.2.2].…P40

 

37. 名義タイプタクソン.

37.1. 定義.ある科階級群タクソンが細分された場合,上位タクソンのタイプ属を含む従属的タクソンを,同一の著者と日付[条36.1]をもつ(接尾辞を除き)同一の学名で示す.この従属的タクソンを,名義タイプタクソンという用語でよぶ.

 

37.2. 学名の変更が名義タイプタクソンに及ぼす影響.ある科階級群タクソンに対して使用中の学名が不適格かまたは無効であるならば,その学名は条23.3.5の下で有効な学名に置換しなければならない.その代用名義タクソンのタイプ属を含む(したがって適切な接尾辞を備えた有効な科階級群名で示される)従属的タクソンはどれでも,名義タイプタクソンになる.…P40

 

61. タイプ化の原理.

61.2. 名義タイプタクソンの担名タイプ.ある名義タクソンの担名タイプは,そのタクソンの名義タイプタクソン[条37.1,44.1,47.1]の担名タイプでもある.したがって,一方に対する担名タイプの固定は,他方に対する固定でもある.

 

61.2.1. ある名義タクソンとその名義タイプタクソンに,同時に別々の担名タイプが固定された場合,高位階級のタクソンに対する固定が優先権をもつ.

 

61.2.2. 科階級群,属階級群,種階級群のどれかにおいて,ある名義タクソンの階級が上昇したり下降したりする場合,あるいは,そのタクソンの学名が同時に複数の階級で使用される場合、そのタクソンの担名タイプは同じままである[条36.2,43.1,46.2].…P56

---------------以上---------------- 

 

条64. タイプ属の選択.

新しい名義科階級群タクソンを設立したいと望む著者は,そのタクソンに含まれるどの属でも,その著者が有効だと見なす学名をもつものを[条11.7.1],タイプ属として選ぶことができる.最古の学名である必要はない.タイプ属を選択することによって,その名義科階級群タクソンの学名の語幹が決まる[条29.1]。

 

例)Vesicomyidae Dall & Simpson, 1901 ーVesicomya Dall, 1886

Adulomya Kuroda, 1931

Calyptogena Dall, 1891

Laubiericoncha von Cosel & Olu, 2008 等

新たに科を設⽴したい!ので、タイプ属としてCalyptogena属を選び、Calyptoidae科とする…?

 

---------------以下、参照すべき条項----------------

条11.7. 科階級群名(章4. 適格性の要件)

11.7.1 科階級群名は,最初に公表されたときに,次のすべての要件を満たさなければならない.…P10

(11.7.1.1. から11.7.1.5. までの詳細は,P10 - P11)条29. 科階級群名(章7. 学名の形成と扱い)

 

条29. 科階級群名(章7. 学名の形成と扱い)

29.1. 科階級群名の形成.科階級群名は,タイプ属の語幹[条29.3]もしくは全体[条55.3]に条29.2に定める接尾辞を付加することによって形成する.…P28

 ---------------以上---------------- 

 

勧告64A. タイプ属は有名なものであるべきである.

ある名義科階級群タクソンを設立したいと望む著者は,可能な限り,有名かつその科階級群タクソンを代表する属を,それのタイプ属として選ぶべきである.

 

 

条65. タイプ属の同定.

65.1. 正しい同定の仮定.

明白な反する証拠がない限り,名義科階級群タクソンを設立する著者は,それのタイプ属を正しく同定していたと仮定するものとする.

 

65.2. 誤同定や変化した概念.

安定や普遍性が脅かされていたり,混乱が生じそうになっているなら,それが,

65.2.1. 科階級群名が設立されたときにタイプ属が誤同定された(すなわち,それのタイプ種によって決定される以外の意味に解釈された)ことを発見したことによる場合は,裁定を求めて審議会にその案件を付託するものとする.

 

 

65.2.2. タイプ属に対するタイプ種の固定(もしくは,そのタイプ属に対する担名タイプの固定)が見落とされていたことを発見したことによる場合は,裁定を求めて審議会にその案件を付託するものとする[条70.2].

 

65.2.3. タイプ属が設立された時点で誤同定されたタイプ種に基づいたことを発見したことによる場合は,条70.3に規定された名義種をタイプ種として固定することができる.条70.3の下のタイプ種固定によっては脅威にうち勝てない時は,裁定を求めて審議会にその案件を付託するものとする.

 

---------------以下、参照すべき条項----------------

条70. タイプ種の同定.

70.3. 誤同定されたタイプ種.

タイプ種が誤同定されていたことを発見した著者は,次の各号のいずれかのうち,その著者の判断で安定と普遍性にもっともよく寄与するであろう名義種を選びタイプ種として固定することができる(ただし,故意に誤同定を引用して固定されたタイプ種については,条11.10,67.13,および69.2.4を見よ).

70.3.1. タイプ種として以前に引用された名義種[条68,69].

70.3.2. その誤同定が実際に指し示している分類学的種.こちらを選ぶ場合,著者は,本条に必ず言及し,かつ,タイプ種として以前に引用された学名と選択した種の学名の両方を引用しなければならない.…P65