※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

2013年6月9-10日

第5回命名規約輪読会

岡西政典

※レジュメ作成者は瀬尾絵理子で、当日に担当箇所を入れ替えた

 

前文

▼国際命名規約とは?

条項と勧告からなる分類体系である。

当初は国際動物学会議、1973 年以降は国際生物科学連合(IUBS)によって採択。

 

目的 ・動物の学名における安定性と不偏性を推進すること

   ・各タクソンの学名が唯一かつ独自であることを保証すること

→ 本規約の条項と勧告は、上記の目的を遂げるためのものである。分類学上の思考や行為の自由を束縛するものではない

 

原理 ・公表の先取権が基本原理。

→ 先取権の緩和や留保されることもある。

先取権の緩和:長年受け入れられてきた学名を保全する場合

先取権の留保:個別の案件で命名法の安定性が脅かされている場合

 

語義 ・用語の使用にあたっては、厳密性と一貫性があり、語義は用語集に示される

   ・前文と用語集はともに、条項と不可分である

 

著者 ・動物命名法国際審議会である

 

章1. 動物命名法

1.1. 定義

現生している動物や絶滅した動物の分類学的単位(タクソン)に対して適用する学名の体系

→「動物」とは、後生動物及び原生生物タクソンを指す。

 

1.2. 対象範囲

  • 家畜化された動物に基づいた学名
  • 動物遺骸そのものの代替物である化石(置換化石、印象化石、雌型化石、雄型化石)に基づいた学名
  • 生物の仕業が化石化したものに基づいた学名(生痕化石タクソン)
  • 寄集群に対して設立された学名
  • 現生生物の仕業に基づいて1931 年よりも前に提唱された学名

→ただし、以下の学名は規制される。

科階級群・属階級群・種階級群にあるタクソンの学名・科階級群よりも高い階級のタクソンの学名

 

1.3. 除外

  1. 1. 仮説的概念
  2. 2. 奇形標本そのもの
  3. 3. 雑種標本そのもの
  4. 4. 亜種よりも低位の実体
  5. 5. 一時的な引用であり、且つ学名として使わないもの
  6. 6. 1930 年よりも後の、現生動物の仕業
  7. 7. 一定の接頭辞や接尾辞を付加して適応名を変形したもの

1.4.独立性

動物命名法は他の命名法から独立である。

→ある動物の学名が、動物以外のタクソンの学名と同一であっても拒否されない。

 

勧告1A

新属階級群名設立時には、同じ綴りの学名が設立されていないか調べ、同じ綴りの動物学名の設立を差し控えることが強く望まれる。

 

条2.0. 特定の学名の許容

次の2 点については学名が許容される。

 

2.1.

最初は動物以外、後になって動物に分類されたタクソンの学名 → 条10.5 に条件が記載

 

2.2.

一度でも動物に分類され、後になって動物以外に分類されたタクソンの学名

 

3.0. 起点

1758 年1 月1 日を、動物命名法の起点とする