※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.
また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.
2012年6月10-11日
第4回命名規約輪読会
伊勢戸徹
条79 『List of Available Names in Zoology』
動物学関連の国際団体が特定の分類群について提案する適格名リスト。審議会が採用。
条79.1 提案書の形式
分冊形式←個々の提案書は『List of Available Name in Zoology』を構成する一部(分冊)と捉えている。
条79.1.1
提案書の対象範囲(分類群、階級、期間)を明確に。
条79.1.2
文献参照、著者と日付、命名法的地位(適格性、担名タイプ、優先権:[用語集参照])を記す
条79.1.3
担名タイプの種類、供託場所を記す(レクトタイプ、ネオタイプ指定は不可)
条79.1.4
過去の審議会裁定があればその意見書と裁定結果を記す
条79.1.5
他の分類群とのホモニム関係があれば記す
条79.2
審議会による告知、協議、および投票に関する要求事項
条79.2.1
『List of---』の提案あれば審議会は特別委員会を設置する
条79.2.2
提案書を受領したら審議会はすぐに
条79.2.2.1 BZNに公表し12ヶ月間の批評受付を開始
条79.2.2.2
対象の分類群の関連雑誌に告知を投稿
条79.2.2.3
特別委員会は2年後以降に結論を出し審議会へ報告。
条79.2.2.4
提案書には最初の提案時点で5年以内の学名は含めてはいけない。
条79.2.2.5
改定を加えた提案書を再び告知し批評を求める(期間は記載なし)
条79.2.2.6
審議会にて票決
条79.3
分冊の発行日とその入手可能性 審議会は決議後速やかに『List of---』を『BZN』に公表する
条79.3.1
分冊の入手方法を告知中に記載
条79.3.2
分冊の発効は告知がBZNに掲載された日。
条79.3.3
分冊の対象範囲(分類群と期間)を告知文に記載する
条79.4
『List of---』中で特定された学名、綴り、適格になった日付およびタイプの地位
条79.4.1
『List of---』中の学名は適格名。綴り、日付、著者権も“正”となる。
条79.4.2
タイプも『List』中に記載されたものが“正”となる。
条79.4.3
『List of---』の対象範囲でありながら掲載されなかった学名は不適格となる。
勧告79A
『List of---』により不適格になった学名を引用したい場合は、不適格であることを名
言すべき。
条79.5
『List of---』中に現れる学名の地位を改訂する審議会の権限 『List of---』中の記載事項が原因で混乱が生じている場合、審議会の強権で改訂できる。裁定は『意見書』[条80.2参照]に公表。
条79.5.1
改訂の日付はBZNに掲載された日
条79.5.2
『List of---』の修正には審議会の強権が必要だが、後世の命名法的行為(1931年より前の属のタイプ種固定/レクトタイプ指定/必要なネオタイプ指定)を妨げるものではない。また、後世の命名法的行為は『List of---』に追記されるべきである。
勧告79B
条79.5.2でのレクトタイプ指定とネオタイプ指定の際は審議会に知らせること(『List of---』を更新するため)。
条79.6
入れ忘れた学名を『List of---』に加える審議会の権限 審議会の強権で適格性を回復可能
条80
審議会の行為の地位 審議会は以下を採用できる。
条80.1
布告書→動物命名規約の暫定的改正を示すもの。職権を有する国際団体(具体的には国際生物科学連合)が批准or拒否するまで規約と同等の効力を持つ。
条80.2
意見書 審議会の「公式回答書」であり以下の2ケースあり。
条80.2.1
規約の解釈を述べるケース
条80.2.2
強権を発動して、規約の適用を除外するケース
条80.3
意見書の発効日付→BZNに掲載された日付
条80.4
意見書中の過誤もしくは不作為の訂正書→『公式訂正書』は再投票をせずに公表可。
条80.5
意見書の解釈 意見書は厳密に対象案件のみに適用する。同様の状況の他の案件には影響しない。
条80.6
『Official List』中の著作物、学名、命名法的行為の地位 審議会は意見書の結果を『Official List』と『Official Index』中で公表する。『Official List』は次の4つのリストの総称
条80.6.1
『Official List』中の学名は適格。ただし、適格名であっても問題を残す場合は『Official Index』に載る。
条80.6.2
『Official List』中の学名は『意見書』と『公式訂正書』に従うが、『List of Available Name in Zoology』で別の地位が与えられている場合はそちらが有効。
条80.6.3
追加特性 [additional qualification](優先権など)がなくても掲載できる。
条80.6.4
異名があっても通常通り扱う
条80.6.5
『Official List of Works Approved as Available for Zoological Nomenclature』に掲載された文献は、審議会が様々な制限を設定している場合があるが、基本的には通常通りに規約に従う。
条80.7
『Official Index』中の著作物、学名、および命名法的行為の地位
『Official Index』は次の4つのリストの総称
意見書の結果で『Official Index』に掲載されたものの場合…、
条80.7.1
学名、命名法的行為はそれぞれの裁定による地位を持つ。有効名として使えない名前(裸名[nomen nudum]や「拒否著作物」中の名前のために不適格となった学名、誤った後綴りなど)がリストされる
条80.7.2
『Official Index』に掲載された抑制著作物は適格性も有効性も持たない。
※抑制著作物とは、審議会が未公表、不適格と裁定した著作物
条80.8
『List of Available Name in Zoology』と『Official List』のなかの学名に審議会が与えた矛盾する地位 →前者が正しいとする
条80.9
審議会の過去の決定 →審議会の同意なしには除外されない
大久保(2006)によると1907年以来、Opinionは2000件を超えており、全て調べることは無駄だが、自分の専門とする分類群については全てチェックしておくべき。
『Official List and Indexes of Names and Works in Zoology』(『Official List』と『Official Index』をまとめた書籍)は2冊まで出ている。