※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

 2014年6月15-16日

第6回命名規約輪読会

生野賢司

 

条13 (1930年よりも後に公表された学名)

主な内容:1931年1月1日~に公表された学名が適格であるための要件

※1931年は、現行規約の前身である万国動物命名規約(『Règles internationales de la Nomenclature zoologique』)の発効年

※条15は「1960年よりも後に公表された学名および命名法的行為」であるが,

この条13の対象は~19601231日ではない点に注意.

 

13.1

条11を満たす

記載 or 定義あり[条13.1.1]

or

文献参照あり[条13.1.2]

or

新置換名として提唱[条13.1.3]

適格

 

勧告13A

新タクソンを記載する際は,判別文によって識別の意図を明確にすべき.

 

勧告13B

新タクソンの判別文は,国際的な言語で公表すべき.そのタクソンに関連する地域の言語でも与えるべき.

 

条13.2 科階級群名

 

条13.1を満たす

その科階級群タクソン内の有効な(※)属名から形成

適格

 

※著者が有効だとして使用していればよい(本当はor解釈によっては無効かもしれない)

 

13.2.1 過去の規約に違反していたものを適格と認める例外

 

1931/1/1~1960/12/31に公表

条13.1を満たさず

公表~1999/12/31

有効として使用

1961/1/1~1999/12/131

当時の条13を示して拒否されず

 ↓

原公表の時点から適格

 

13.3. 属階級群名(寄集群or生痕化石に対する名称は除く)

 

条13.1を満たす

タイプ種の固定あり

or

新置換名として提唱

適格

 

13.3.1. 新置換名で置換する際,タイプ種の固定がまだであれば,指定

13.3.2. 寄集群はタイプ種をもたないため,その固定は必要ない

13.3.3 生痕化石タクソンの場合

~1999/12/31の公表であれば,タイプ種の固定は必要ない

ただし2000/1/1~に新置換名で置換する際,タイプ種の固定がまだであれば,指定

 

※条66(p.58)では,2000/1/1~は「1999年よりも後に提唱された属階級群レベルの生痕化石タクソンは,その学名を適格にするために固定したタイプ種をもたなければならない」と書かれているが,条13には(「章4 適格性の要件」の条であるにもかかわらず)記述がない.大久保(2006,動物学名の仕組み,p.72)はこの点を規約のミスとし,「念のために原出版[=原公表]においてタイプ種を固定しておくべき」としている.

 

13.4. 新属階級群タクソンと1新種のひとまとめの記載

 

"gen.nov., sp. nov."などと示されている

条13.1.1を満たす

適格

 

※gen. nov., sp. nov.:genus novum, species nova:新属新種

 

2000/1/1~の種階級群タクソンは条16.4の条件(タイプ固定とその標本の保管場所などの記載)も満たす必要あり

 

タイプ種の固定は必要?

→1種のみが新属階級群に含められているため,タイプ種は自動的に決まる(条68.2.2,条68.3).

 

13.5. 新科階級群タクソンと1新属のひとまとめの記載

 

条13.1.1. を満たす

新名義属のタイプ種固定あり

適格

 

勧告13C. ひとまとめの記載や定義は避けるべき.

 

13.6. 除外するもの

 

13.6.1 条12.2の“指示”によって適格にならない場合あり

※条12の対象が1931年よりも前に公表された学名であることを考えれば当然

※例えば、描画のみ、はダメ

 

13.6.2 現生動物の仕業に基づく名称

※生痕化石に基づく名称は除外されない

※条12.2.8では「生物」の仕業とある.形成主が動物であるか不明な生痕化石(規約の対象)を含んだ表現なのであろう.また,現生動物という表現はあるが,現生生物という表現はない.通常,動物でないことが明らかなものは規約の対象から除かれるためであろう