※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.
また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.
2013年6月9-10日
第5回命名規約輪読会
瀬尾絵理子
※レジュメ作成者は岡西政典で、当日に担当箇所を入れ替えた
11. 7科階級群名の適格性について
科階級群名は,最初に公表された時に後の項を満たす限りにおいて適格
11.7.1.1
新科階級群名は,提唱時に適格かつ有効な属名の語幹に,ODEA(上科),DAE(科),NAE(亜科),INI(族),INA(亜族)の,複数形を表す接尾辞を結合したものでなくてはならない.ただし,その後属名が無効となってもその科名の適格性は失われない.これらの語尾をもつ属・種階級群名は関係ない[条29.2].この科階級群名を担うタイプをタイプ属という[条63].タイプ属は,その科階級群の中の最古参でなくともかわない[条64].ただし,その科階級群の特徴を表す属にすべき[勧告64A]
〇科階級群名の形成のルールは以下の条29に示す通り※条29反するからといって不適格とはならない
29.3.3
1999年よりも後に上記の条が適用できたのに,規定と異なる語幹に基づいた科階級群名を設立した場合,1) 正しい接尾辞になっている[条29.4.1],2) ラテン語・ギリシャ語を任意の文字列として扱っている[条29.4.2]ことを条件に,原著を正しい綴りとして受け入れる.
→本条と条29.3.3を併せることで,科階級群は必ずしもラテン語・ギリシャ語の文法に従わなくてもよいことになる.
科階級群名は,文法的に間違っていても,慣用名があればそれを維持する[条29.5]
→すべての科階級群名の語幹は,属名全体に置換すべき?(大久保本,勧告29A)
同名は回避すべき[条29.6]
〇1999年よりも後に提唱された科階級群名は,タイプ属の引用を伴うと共に[条16. 2],以下のいずれかの要件を満たした上で適格である:
11.7.1.3.
IDEAなどの科階級群接尾辞が不正な場合,誤った原綴りとして訂正される[条32.5.3.1].
→IDEA, DAE, NAE, INI, INAを使わなかったからと言って不適格とは限らない.
11.7.2.
ラテン語以外の言語で(通俗名として)提唱された科階級群名は,以下の条件を満たす限り適格.1) 1900年より前の出版,2) のちの著作物でラテン語風に綴られている,3) その動物グループに関心のある多くの者(大抵の場合,研究者?)が有効名として著作物に掲載している.
→フランス語の科名救済の目的であろう.普通,アルファベット言語でないと本規約には当てはまらない?(日本語では無理?)
11.8属階級群名の適格性について
属階級群名は複数文字からなる1語で,主格単数名詞.奇集群や,属階級群として設立された生痕化石タクソンは属階級群として扱う[条10.3].
※奇集群にはタイプ種の概念はない.生痕化石にもタイプ種は設立しなくてもよいが,2000年以降の生痕化石タクソンにはタイプを指定できる.
11.8.1
属階級群の名称は,ラテン語でなくとも主格単数の名詞という事にすれば成立しうる.例えば,「飛ぶダニ」は名詞とは言えないが(「飛びダニ」なら名詞か),Tobudaniとして綴り,「単数名詞として扱う」と宣言すれば本条には反さない.ラテン語文の中で主格単数でない属名が初めて出版された場合は,後に主格単数に訂正する.
→すなわち,属階級群名では最初に公表された時は主格単数でなくともよい場合がある.これに対し科階級群名は最初から主格複数が要求される.