※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.
また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.
2011年6月5日
第3回命名規約輪読会
岡西政典
章8 名義科階級群タクソンとその学名
条35. 科階級群
35.1.
上科よりも低く属よりも高い随意の階級。奇集群は属階級群(条10.3)、生痕化石タクソンは設立された当時の階級群とする。
35.2., 35.3.
各科階級群名は同一の、ひとつのタイプ属の語幹より形成され、接尾辞が異なる以外は同じ条項の対象とする。
35.4.
科階級群名は、他の階級群と同じく、ラテン語やギリシャ語の文法に基づいて形成される。基本的には、名義タイプ属名の語幹に-daeなどの接尾辞を付けることで完成する。
35.4.1.
科階級群名の基となったタイプ属名が不当な修正名か不正な綴りであり、無効名となった場合は、科階級群名も代用の有効名に修正する。ただし、それらの綴りが保存されている場合は、科階級群名は修正せずとも良い→科階級群名と属名の語幹が異なる場合が生じる。
35.4.2.
科階級群名の語幹となったタイプ属の名前が有効名であったとしても新参同名として無効になった場合、その科階級群名は後に不当な修正名として提唱されたその代用名の語幹に基づかなくてはならない。ただし、その際のオーソリティは最初の無効になった名前の著者に基づく。
35.5.
A科の中にA亜科とB亜科があった時に、B亜科の方がA亜科よりも古いこと(古参)が判明しても、A科の名前をB科とはしない。ただし、これは同じ科内において古参が判明した場合に限る。もし新たなA亜科よりも古いC亜科がA科に導入された場合は、C亜科という名前となる。
条36 同位の原理
36.1.
あるひとつの科階級群のタクソンが1900年に出版されたとき、それに伴って全ての階級に同じタイプ属を持つ科階級群のタクソン(すなわち、上科、科、亜科、族、亜族)が設立されたことになる。これらのオーソリティは1900年に帰する。もし、ある階級群の中に、オーソリティの違う2つ以上の階級があることがわかった場合、最初にその中の科階級群を設立した著者にオーソリティを帰することになる。
36.2.
ある亜科が科に格上げになったとしても、そのタクソンのタイプ属は変わらない。
条37. 名義タイプタクソン
37.1.
名義タイプタクソン:複数の下位タクサを持つ上位科階級タクソンの中で、上位科階級タクソンと同じタイプ属を持つ従属的な科階級タクソンを名義タイプタクソンとする。
例) Aus 属をタイプ属とするA科があり、その中にA亜科とB亜科があったとする時、A亜科が、上位タクソンであるA科のタイプ属Ausを含む名義タイプ亜科である。
37.2.
ある科階級タクソンの学名が無効になり、代用名が立てられた場合、その従属タクソンが名義タイプタクソンとなる。例えば、A亜科, 1850 とB亜科、1860を含むA科、1850のAが無効または不適格となったとき、Bがその科の代用名となり(すなわちB科, 1860となり)、これに伴って、B亜科がこの科の名義タイプタクソンとなる。