※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.

 

2018 年6 月10-11 日

第8回若手分類学者の集い レジメ

伊勢戸 徹

条70 タイプ種の同定

 

タイプ種の指定の際に、同定は正しかったと仮定するのが基本である。同定を間違えているかもしれないと疑い始めると収拾がつかないだろう。

 

70.1.1

タイプ種だけでなく、属に含める全ての種について。

 

70.1.2

その中からタイプ種を選ぶにあたって。

 

タイプ種の固定に関して、先取権の原理を言っている。

 

指定されたタイプ種が、故意ではなかったが後から誤同定であったことがわかった場合の対応について。

 

70.3.1.

学名が指し示す種をそのまま固定する場合。実態として、当初の“つもり”の種とは異なることになる。既に誤同定の意味で多くの研究が出ていた場合は混乱を生むかもしれない。

 

70.3.2.

その“つもり”だった種を後から指定し直す場合

※ その“つもり”だった種が未記載種の場合は新種をつくることになる?

※ 下記の例のように明確に言及する必要がある。「本条に必ず言及し」とあるので、「(規約条70.3 に基づき)」の部分は必須だろう。

 

同例の4行目以降(下記)は、規約の以前の版ではそうする(審議会に諮る)

必要があったという事例であり必要以上に複雑かつ難解である(大久保(2006)にも

解説がない)。

 

<第4回時のレジメから引用(一部改変)>

  • 1792 年 Fabricius 氏 Staphylinus tristis を新種記載する
  • 1802 年 Gravenhorst 氏 ある標本を ”Staphylinus tristis” と思って記載した(=誤同定)
  • 1829 年 Stephens 氏 新属Quedius に “S. tristis Gravenhorst” を入れる
  • l 1837 年 Curtis 氏 S. tristis Gravenhorst がタイプであると指示する
  • l 1949 年 Tottenham 氏 誤同定に対応し、S. levicollis Brulle, 1832 をタイプ種に指定= “S. tristis Gravenhorst, 1802, nec Fabricius, 1792” の有効な異名とした(necはnonの意?)
  • 1996 年 審議会 意見書1851 において、S. levicollis をタイプ種に指定
    • “S. tristis Gravenhorst” が適格名でもなければ明示された誤同定でもなかったことからタイプ種として適格でなく(条67.2.1)、よって安定性を重視して意見書で裁定が下された、ということか。
  • 2000 年以降であれば、 条70.3.2 の下で審議会に頼ることなく、S. levicollis をタイプ種に指定できる。

 

本条項は他の条項の繰り返しをしているだけ。

  • 70.4.1. 設立時のタイプ種指定の場合
  • 70.4.2. 後からのタイプ種指定の場合

※大久保(2006)によると、タイトルの“同定”は不適切で、“指定”が適切(誤訳でなく原書がそもそも不適切)。

→故意の誤適用によるタイプ種の指定

※「故意の誤同定によるタイプ種の指定」ではいけないのか?→用語集によると、誤適用は学名に、誤同定は標本に対して使う用語。タイプ種に指定するのは標本ではなく種名なので、ここは誤適用なのか。

 

引用文献

  • 大久保 憲秀, 2006, 動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方. 伊藤印刷出版部, 301p.