※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.

2018年6月10-11日

第10回命名規約輪読会

伊藤雄氣

 

条 68.原公表中で固定されたタイプ種.

条68.1.固定方法における優先順位.1つの(もしくは複数の)種をタイプ種として固定するにあたり,条68.2~68.5に規定する方法の複数が該当する場合,有効な固定は,優先権の次の順序を参考にして決定される:第一は原指定[条 68.2],次は単型[条 68.3],次は完全同語反復[条 68.4],最後 はリンネ式同語反復[条 68.5]である.

 

本条は「原公表中で固定されたタイプ種」について扱う(1931年よりも前ではタイプの固定または指定は必須ではなかったため. 現在でも, 指定しなくても原公表中で固定される場合はこれを使ってもよい.)

 

勧告68A.タイプ固定の引用.ある種をタイプ種として固定する方法として,本条に規定する複数の方法が該当する場合,有効な固定のみを引用するべきである.

以下の条件が複数該当する場合も有効な固定 (=優先権の高いもの)だけを引用する.

例えば,上図は68.2.1に該当するため原指定であるが, それと同時にAusAus aus のみを含んで設立された単型であり, 更に属名と種小名が完全同語反復である. このような場合, 有効な固定は原指定による固定である

 

68.2.原指定によるタイプ種.ある名義属階級群タクソンを設立したときに名義種1種をそのタイプ種として明白に指定[条67.5]した場合,その名義種がタイプ種(原指定によるタイプ)である.ただし,条70.3の条項が適用される場合はこの限りではない

 

上記事例に同じ.条70.3はご同定されたタイプ種.

 

68.2.1.新しい名義属もしくは名義亜属に設立時に含められた複数の新しい名義種のなかのただ1種に対してのみ“新属新種”,“gen. n., sp. n.” もしくは同義語を 1931年よりも前に適用したということは,タイプ種が別に明白に指定されてはいないならば,それを原指定だと見なす.

 

上記事例に同じ.gen. n. sp. n.の同義語はgen. nov. sp. nov.など.

 

68.2.2.ある名義属階級群タクソンがタイプ種の明白な指定なしに設立されたときに,設立時に含められた新しい名義種[条 67.2]1 種に, typicus,-a-umもしくはtypusという種階級群名が与えられていれば,その名義種を原指定によるタイプ種だと見なす.

以上の例の場合, Aus typicus は「新しい」名義種ではないので原指定がによるタイプ種ではない(原公表中でタイプ種が固定されない場合).

 

68.3.単型によるタイプ種.ある単一の分類学的種に対して名義属階級群タクソンが設立され,その種が適格名で示されている場合,そう命名された名義種がタイプ種である.この方法による固定を単型による固定だと見なす.これは,他にどんな異名,亜種,不適格名が引用されているかにかかわらず,学名で引用していない他の種がその名義属階級群タクソンに含まれると著者が考えているかどうかにかかわらず,さらに,なんらかの名義 種階級群タクソンがその名義属階級群タクソンに疑問つきで含められたり同定されたりしているかにかかわらない.

 

AusAus aus のみを含んで設立されたとき, Ausは単型によるタイプ種.

 

68.3.1.ある新属が,その学名が設立されるときに亜属に分割され,その名義タイプ亜属が1種のみを含むならば,その名義種が,その新しい名義属の単型によるタイプだと見なす. 

以上の場合, Aus busが単型によるタイプ種となる.

 

68.4.完全同語反復によるタイプ種.ある名義属階級群タクソンに設立時に含められた[条67.2]有効なある種階級群名もしくは引用されているそれの異名が,その属階級群タクソンの学名と綴りが同じならば,その種小名 (適格であれば)で示される名義種階級群タクソンがタイプ種である(完全同語反復によるタイプ).

 

例.新しい名義属 Aus Smith は名義種のひとつとして Aus xus(Brown)を含んでおり,後者の引用された異名中に適格名 がある.Aus のタイプ種は,Bus xus Brown ではなく Bus aus Robinson である.

上記の例の場合,Ausのタイプ種はBus ausとなる.

 

68.5.“リンネ式同語反復”によるタイプ種.1931 年よりも前に設立されたある名義属階級群タクソンに設立時に含められた名義種[条67.2]のうちただ 1 種の異名リスト中に,新しい属階級群名と同じ綴りの一語からなる 1758年よりも前の学名が引用されている場合,その名義種がタイプ種である(“リンネ式同語反復”によるタイプ).

例.属Castor Linnaeus, 1758(ビーバー)は2種を含んで設立された.これらの種の1つ(Castor fiber)の異名リスト中で,一語の学名“Castor Gesner pisc. 185”が引用されている.ゆえに,リンネ式同語反復により Castor fiber Linnaeus, 1758 が Castor のタイプ種である.

 例は以下のような状況を示す(1758当時). この場合, Castor castor という名は存在しないが, Gesnerによる一語名Castorを同語反復と看做し, Castor fiberをタイプ種とする. Gesner pisc. 185はスイス人博物学者のConrad GesnerによるGesner, C. 1598. Fischbuchのリンネによる引用. ドイツ語のFischはラテン語のPisces(魚)である.

68.6.過去の著者による誤適用もしくは誤同定を故意に用いて引用された学名でのタイプ種の固定.条 11.10 および 67.13 を見よ.

条67.13参照.